Book Review Title

「スポーツ代理人」(ロン・サイモン著、ベースボールマガジン社)

スポーツ代理人とはなんぞや?

久しぶりの書評ですな。巷ではジャイアンツ松井の代理人がついに決まったと話題になっていますが、ここ日本ではプロ・アマに関わらずス ポーツ選手の代理人に関する認知度が低いようです。「プロアマに関わらず??」って代理人はプロだけじゃないの?って思うかもしれませんが、世界的にはプロ未契約選手にも代理人がゴロゴロ青田買いに走っているのでアマ選手にも代理人がつくことは珍しくないようです。

どうも日本では野茂や伊良部の大リーグ移籍騒動で半分悪役として活躍したダン野村氏のイメージから代理人=胡散(うさん)臭い人、という印象を持っている人が多いようですが、スポーツビジネスが盛んな北米やヨーロッパではとてもメジャーな存在です。(しかし実際ヤクザまがいの代理人も数多く存在し、恐喝に近い事件もおきていますので。念のため)といってもなかなか代理人の実際の仕事をイメージできないという人々のために書かれた本がこれです。

代理人の仕事として一番知られているのがチームとの契約交渉代行業です。スポーツが巨大ビジネス化していく中、タダでさえ複雑な法的知識が必要な契約交渉を、選手の主張と球団の主張を仲介しながら進めていく役目です。目標とされることは常に「その選手の年齢と成績に基づく市場価値相応の報酬を引き出すこと」にあるわけですが、これはなかなか一筋縄には行かないものです。

なぜなら市場価値なんていうものは非常に曖昧なもので、新リーグができるとか、FA選手がその年どのくらい市場にいるかなどの条件によって 刻々と変化していくからです。代理人は、早くプレーしたいと契約を焦っている選手をなだめつつ、適正な市場価値が市場で明らかになるまで契約を煮詰めて、お金を出し渋るオーナー&GMとあの手この手の駆け引きを繰り返していくわけです。で、手数料として契約金とか年俸の数%をいただくわけです。

しかしその実情たるや...

だからきちんとした代理人はそこら辺でヤクザっぽく脅しまがいの交渉を繰り広げるやつらとは訳が違う。俺はスポーツ代理人ではなくスポーツ弁護士だ!と主張するサイモンさんなのですが、まあここまでは格好のいい話です。しかし交渉の中身を見てみるとこの人も結構やってます。知り合いの経営する球団使って「偽のオファー」をちらつかせて本命球団を焦らせて年俸を吊り上げたり、他に代理人がいる選手の代理人を裏で行なってクライアントを奪ったり...「以後は反省してこんなことは二度としていない」なんて感じのこと書いちゃってますが、まだまだあるはずです。まあ本質的にそういうきわどい駆け引き満点の仕事なんでしょうが...

それだけが仕事じゃないんです。

代理人の仕事は(選手との契約内容によりますが)契約交渉だけでなく多岐に及んでいます。選手の資産管理、肖像権管理、衣食住の管理、選手によっては高級宝石好きの奥さんの買い物のアドバイス(ようするに浪費の歯止め)までも含まれるとか...。いやいやこりゃある意味選手の親より大変です。

そんなこんなでアメリカ4大スポーツの裏事情が垣間見れるこの本、サイモンさんがミネソタ出身だけにホッケー選手の契約の話(へクストール親子、ニール・ブロテン)もたくさんあって楽しめます。

が、ヘローキィは契約交渉の内容をいくら読んでも正しく理解できず、「契約ボーナスが**万ドル、87年が**万ドル、88年が**万ドルの総額**万ドルで、うち**万ドルが10年間の繰り延べ払いで利子を時価換算すると結局**万ドルの契約で、これは前の契約と大差ない」とか言われても「いやーどっちも俺には大金だけどな...」と思うだけです。どうやらかなり金の計算に弱いコーチだったみたいです...

今度はこんな大金をあの手この手で要求する選手たちを管理する球団側の言い分を書いた本も紹介したいと思います。