Book Review Title

「ザ・ウィナーズ」(パット・ライリー著、講談社)

NBAの名将、パット・ライリーの著書

いきなりですが私はこの本の帯カバーの「日本人には分からない本当のチームとは何か。日本のチームはなぜ世界で勝てないのか...云々」が気に食いませんでした。なんでそーなるの? 日本人ってそんなにダメなんかい? スポーツの世界では確かにアレだけど、日本の組織=チームが国際的に通用しまくっている分野はいくらでもあるではないですか。

スポーツでも野球界なんて日本球界で活躍した人たちがメジャーで日本式の組織作りを取り入れて成功しているではないですか。私たちはいい加減に「自分たちはダメで外に学ばなければいけない」 症候群を克服しなければなりません。とかいいながら私も外国の本をよく読みますが、それはあくまで参考です。感心しながらも批判的で独創的な視点をもち続けなければいつまでたっても外人の真似で終わります。といってついついこの本を手にとってしまった時点で、コピーライターの思う壺でしたね...

それはいいとして、私はこの本、大大大好きです。正直言ってフィル・ジャクソンの本より全然良いです。非常に具体的で、何かを伝えようとする意思と工夫にあふれた書きっぷりです。 ライリーはNBAでロサンゼルス・レイカーズを4度優勝に導き、その後低迷するニューヨーク・ニックスを強豪にし、さらにマイアミ・ヒートもいきなり強くするなど、NBA屈指の名将の誉れ高い人物です。ジャクソンが現役時代名選手で、割と順調なコーチ人生を送ったのと対照的に、ライリーは選手としてはたいして活躍せず、フロントの手伝いなどを経て少しずつ階段を上がった苦労人です。だからこそ彼のチームの本質を見抜く目は非常に確かです。

彼は本書の大前提として、「完成された理想のチーム作りを目指す」ことではなく「変わり行くチームの本質を理解し、長期間トップに君臨する」ことを目指しています。 環境が変わったチームが急に強くなり、そうするとチーム内でのエゴができて、それを更にまとめて、思わぬ災難を乗り越え...と彼のチーム作りのプロセスとそのノウハウは、チーム=組織というものに属したことがある人であれば誰もが顧みて納得してしまうことばかりです。

さらに彼はバスケ以外の様々なエピソードを盛り込んでいます。労使紛争から再建した工場の話、不治の病に犯されながら自己実現した人の話... これは彼の教養の広さと本質を見抜く目の鋭さを物語っています。ホッケーの話しかできないようでは良いホッケーコーチにはなれませんからねえ...。こういうアプローチは参考になります。

いろいろ見ていくうちに、彼もジャクソンと同じく非常に大切な真理に基づいて指導していることが分かります。「物事は必ず変化していく、ということを受け入れよ」これって...またしても禅じゃないですか?? ますます禅への興味が高まる今日この頃。とにかくこの本は素晴らしい!!

P.S. 昨日の書評に書き忘れましたが、そのパット・ライリーとは、ロバート・デ・ニーロにちょっと似た感じの結構格好良い、なんていうかこの黒スーツが似合いそうな、よく見るとちょっとヤクザっぽい、いやよく見なくてもかなり恐い感じのおっさん(失礼)です。結構この手の強面(こわおもて)のコーチっているんですよね。NHLではモントリオールやトロントやボストンで鳴らしたパット・バーンズが、元警官とか言ってたけど、どう見てもヤーさん面でした。実際、おそろしく恐いことで有名だったらしいし。スコッティ・ボウマンだってマイク・キーナンだってなんかマフィアのボスみたいだし...。サッカー・ブラジル代表監督のレオン氏もJリーグ清水監督時代はそうとういかつい風貌と言動でならしたらしいし。まあ、選手も一流になるとマジで恐そうな人が多いので、彼らと張り合っていくにはそれなりの風格が必要なのでしょう。うーん、コーチ・ヘローキィもひげでも生やして風格出すかな。(←似合わない)