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ブラボー、トゥルシエ!

今日はサッカー日本代表監督のフィリップ・トゥルシエ氏について。実は私はかねてから日本ホッケー界きってにトゥルシエ擁護派として知られています。(誰も知らないと思いますが)いろいろという人がいますが、私、指導者として非常に好きなんです。ああいうタイプ。

日本のサッカー関係者の「見識がある」「お偉いさん」方はいろいろなご意見を述べてトゥルシエを批判したがりますが私の中ではトゥルシエはサッカー史上に残る名監督になる素養があるのではないかと思うのです。 まず彼のチーム作りのコンセプトがすごい。自分の信念を貫き、他人の口出しも批判もどこ吹く風。うるさい奴らにはバンバン牽制球を投げ返す。そしてしっかりと最後にまとめて結果を出していく。

うま過ぎる。

トゥルシエ批判派の主な主張はこうだ。 「合宿にメンバーをたくさん呼んできて、選考の紅白戦もしないで、対人練習もしないで、フラットスリーの模擬練習ばかりやっている」「エキセントリックな言動は日本人社会に適さない。彼に合わないで埋もれた選手もいる」「選手交代が下手だ」 ようするに「今まで日本人や、日本にきた外人監督もしたことがないことをやっている」「本当のサッカー先進国ではあんな指導者はいないし、成功もしない」みたいな論調です。

で、本人の言い分はこうです。合宿で紅白戦をほとんどしなかったことに対しては 「私は選考してから合宿をしている。なんで合宿で選考するんだ?合宿は私のコンセプトを教え込むところだ」 まったくもってその通りです。ただでさえ限られた代表合宿期間に、いまさら紅白戦なんて余裕はないはずなんです。だいたい過去の代表合宿なんて、実質的に固定されている11人を相手に控え組みが練習してにさせられて、たいしたコンセプトも教えられることなくぶっつけで本番に挑んでいたことが多かったと聞きます。自分の使うシステムの練習をする中で本当にそのシステムに向いている選手を発掘することのどこが問題なのでしょうか?

指導者の立場からすれば、トゥルシエの言い分は非常に的を射ています。(あくまで私はそう思うということです。念のため)エキセントリックな言動はもっとも意見が分かれるところだと思いますが、私は彼の言動は非常に計算高い「芝居」であると読んでいます。(もちろんキレやすいんでしょうが、実際)わざと選手を侮辱する、プライドに訴えて、それで歯向かってこられない奴は所詮試合で使えない。なんて合理的なコンセプトでしょう。

私的には大正解です。選手に複数のポジションを要求し、持ち味が出なさそうなところでわざと起用する。そうしているうちに中村俊輔がどれほど成長したことか!「リーダー失格」の烙印を押された名波は、イタリアでの苦い経験をばねに、チームリーダーになっちゃいました。プライドを傷つけて選手に奮起を促す。グラウンド上で戦うのは選手であり、グラウンド上で成長して監督を見返すつもりになる。そして成長したら今度はその選手を信頼して起用する、という巧妙な自尊心の操作こそが彼の指導の秘訣なんです。

世の中に選手交代がうまいと評される監督は皆無です。誰にでもできる批判ばかり展開している解説者たちは、トゥルシエよりも代表チームのことを把握しているのでしょうか?んな訳ありません。どんな監督も何かの理由があって交代したり、しなかったりするのです。結果論の「たら、れば」のオンパレードで、1年間チームを作ってきた監督の選手交代が批判されてはたまりません。

「ワールドユースは、オリンピックはたいしたことない。所詮は二流の大会での結果だ」とのたまう奴らはもう手の施しようがありません。ワールドユース準優勝なんてつい5年前までは「キャプテン翼」の世界です。それを成し遂げた奴はいなかったのです。トゥルシエの目標は、聞くところによるとW杯決勝進出だとか。やっちゃってください。是非。

長くなってきたのでこの続きはいつか書きますが、一指導者として、トゥルシエの指導力には感心せざるを得ません。そしてマスコミや協会を相手に一歩も引かずに大芝居とエキセントリックな言動で相手をもてあそぶ。やはり彼はただものではありません。