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君は青いパックを見たか?

半年振りに復活のコーチ道です。こういうときはだいたい何かを見て刺激を受けたときなんですが、今回はなつかしのミネソタ時代を思い起こしながらミネソタホッケー連盟のHPを見ているとなにやらアメリカホッケー連盟からのルール改正の通達があったそうです。で、その第1項を見て驚きました。ついにホッケーにもこのときが来たかと...オフサイド廃止なんてことはありません。ついに「子供用パック」の使用が義務化されたのです。著作権の問題が良く判らないのでとりあえず要約しますと、「10歳以下の男女に属するホッケーでは113-127グラムの青いパックを使用しなければならない」ということです。大人用のパックが156-170グラムですから、だいたい25%くらい軽いパックの使用が義務化されたということです。

ブルーパック
↑これです↑

やっと、というか遅すぎます。これはホッケーというスポーツの未熟さを表しています。北欧の一部の地域や北米ではすでにこの子供用パックの使用が行なわれていると聞いたことがあります。しかし、世の中の球技スポーツを見ればサッカー、バスケ、バレー、ほとんどどんなスポーツでも子供用(や女性用)の規格のボール(とかゴールとか競技場そのもの)が存在しないなんていう乱暴なスポーツはホッケーくらいしか見当たらないのです。

私も子供の指導をしているときに、ハンドリングやシュートを簡単にするためにインライン用のパックを使わせたりしていますが、そもそも大人用の、子供にとっては重ーいパックで正しいハンドリングやシュートなんて簡単にマスターできるわけが無いのです。

ゴーリーにしたって「うちの子供は小さいからバタフライすると肩口が開くんです」って、お母さんそりゃあ当たり前すぎですよ。これはゴーリーの技術云々ではなく、子供用のゴールがないというホッケーのレギュレーション自体が問題なのです。こんなんだからホッケーはいつまでたってもメジャーなスポーツになり得ないのです。いや、ホッケー界自体が世界におけるメジャー化を基本的に拒否してるのです。

なぜなら、今までもこのような議論がなされてきたはずなのですが、おそらく「違うパックを揃えるのは面倒だ。ゴールやアリーナに至ってはコストがかかりすぎる」とか、「自分たちはそういう環境の中で上手くなってきた。別にこれからもそれで大丈夫なはずだ」とか、そういう勢力に押し戻されてきたのでしょう。他のスポーツにできてホッケーにできない理由はありません。だいたいパックなんて本場で買えば1ドル以下のものです。子供用サッカーボール導入の方がよっぽどコストがかかるでしょう。

世の中ではより多くの条件の人が使いやすい、「ユニバーサルデザイン」が注目されるようになってきましたが、ことホッケー界は 「ごっつい男のスポーツ」というイメージに自らが縛られ、ホッケーそのもののコンセプトが大人の男を基準にしすぎて損をしているように思えます。カナダではピーウィー(12-13歳)以下でのボディチェックが禁止されていましたが、「やっぱりチェックがあった方がいい」という議論が絶えることなく行なわれています。ホッケーをよりよくするためには子供のホッケーをよりよくする必要があるのです。

こういう点はグローバルスポーツであるサッカー界の人たちはよく判っているようです。子供には子供に合った条件でホッケーをさせることで技術は格段に伸びやすくなるはずなのです。プロのホッケーに関わる人たちが 「ゴーリーの防具が大きすぎてゴールできないなんて」などと泣き言を言う前に、子供が得点技術を伸ばしやすい条件をそろえてあげることこそが、よりよいホッケーに必要だと思うのです。というわけで、日本でもこの青パックが早く採用されないかと思う今日この頃ですが、それよりまずは子供のチェックの制限からかな...

ちなみにこのアメリカのルール改正では10歳以下の男女に属するホッケーでのスラップショット(日本で俗に言うバッティング)も規制されています。腰より上にスティックをあげてからシュートしてはいけないそうです。さらに、2012年はピーウィーの子供達のボディチェックも禁止となりました。これについては、私は反対なのですが...。その話はまたいずれ。

P.S. HLJではこのユース(子供)用4オンスパックを販売しています。詳しくはこちらのオリジナルグッズ販売をごらんください。