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Accountability

こうしてアメリカでホッケーを教えていると、ホッケー界は狭すぎると感じることはよくありますが、最近はよくJamie Ramとリンクで会います。ジェイミー・ラムといえば2000-2001年に雪印で活躍したゴーリーで、現在は息子さんがスクワート(9-10歳)のチームでプレーしているためそのチームのアシスタントコーチしてるみたいです。 札幌でプレーしたのは良い思い出らしく、「あれだけの町にホッケーチームが未だに復活しないなんて信じられん...」と嘆いています。

さて、月末まで試合が続くピーウィーAチーム... 素晴らしい成長を遂げた年ですが、最近ちょっとパフォーマンスが落ち気味で不甲斐ない戦いが続いたりしていました。そもそもスキルが足りないチームだったので守備を固めることから始めて、さらにパスワークを駆使するホッケーに移行していったのですが、パスワークはどんどん進化した一方、個々の守備の意識が薄れてきたからだと、私は分析しました。

そこで次の練習では1対1の攻防のドリルに時間を割くことにしました。ここで私は前の試合、1対1の局面でシュートのフェイントをかけられて見事に抜き去られてしまったDFのミスをチームの前で名指しで指摘して、彼のミスと解決法をデモンストレーションしてみました。

次の日行われた試合の前のミーティングでも「最近、このチームで以前のように堅実にプレー出来ていないプレーヤーが何人もいる。JackとJakeのDFペアは今までの二人じゃないくらい失点を重ねてる。ゴーリーのBarrettも本来の実力とは程遠いプレーだ。Hawkはタフなのかビビってるのかどっちが本当の姿かすら分からない。一体このチームの本当の姿はどこに行ったんだ?」と何人も名指しで批判しました。

良いプレーを名指しで賞賛することはどのレベルでも行われます。しかし悪いプレーを名指しで批判することはバンタム(13-14歳)くらいであれば当然になってきますが、それ以下の年齢で公然と子供のミスを批判するのは微妙な問題です。多くのコーチは、公然と批判することで子どもが「恥をかかされた」と思ったり意気消沈してしまうなどを理由にして「誰とは言わないけど、こんなミスをしたプレーヤーがいた」みたいにお茶を濁しつつ話すか、個人的に話をしようとします。

私は基本的に何歳のプレーヤーであってもチームの前で公然と批判することにしています。あとから「お前を批判した意図はこういう事で...」みたいなフォローも一切しません。中には泣きそうになりながら聞いている子供もいますが、彼らの真剣さは倍増しますし、周囲の緊張感もただごとではなくなります。

大事なのは、決してミスを馬鹿にするような言い方をしないこと、リンクの外での性格その他の問題と結びつけないで、ミスと解決法を明確に語ること、ミスを個人の問題としてではなく、チーム全体が学ぶべき普遍的問題として語ること、そして、次の試合でそのミスが解決されたときには忘れずに賞賛してあげることだと思います。

というわけで、昨日の試合は久々に堅い守備が復活して、3-0で快勝しました。ミスを指摘されたDFはまったく同じ1対1の状況で、今度は見事に相手を止めてみせました。

誰もが誉められたいとは思っても、公然と批判されたくはないものです。しかし、敗戦や失点にはどこかに必ず個人的なミスが関係しているものであり、それはいくらかばっても本人にも周りにも明らかです。敗戦やミスは競技スポーツの一部であり、自分のプレーに責任を持ち、ミスと向き合って改善することが出来なければ競技スポーツを続けることは出来ないでしょう。ですから、ミスをしないように教えるだけでなく、ミスと向きあうことを教えるのも、コーチの大きな仕事だと私は思います。