Question

Q1:ウィークサイドロックやトラップ、ウェッジという言葉の意味は?

はじめまして。ぼくは、札幌の出身で、現在は東京の大学に通う、日本リーグの観戦を中心にした、アイスホッケーファンです(見るだけで、実際にプレーをしたことはありません。)。(中略)
コーチングスタッフへのインタビューなどのページで、「この試合では、フォアチェッキングシステムとしては、2-3ウィークサイドロック(あるいは、ニュートラルゾーントラップ、1-2-2ウェッジチェックなど)を用いた…」、などという文をよく見かけます。2-3、1-2-2、1-3-1の意味はだいたいわかるのですが、ウィークサイドロックやトラップ、ウェッジという言葉が具体的には何を意味するかよくわかりません。(後略)
(アイスホッケーファン)

Answer

まずフォアチェックという概念自体はおわかりのようですが念のため。フォアチェックは自チームがアタッキングゾーンやニュートラルゾーンでパックを失ったとき、

  1. 相手にプレッシャーをかけてパックを奪回することを試みると同時に、
  2. 相手が有利な条件で攻撃を組み立てることがないように相手の攻撃経路をあらかじめ組織的に制限する

ための守備戦術です。1-2-2、1-1-3、1-3-1、2-3などはいずれもこの守備隊形をパックに近い方から順に並べていったものです。さて、問題の

> 2-3ウィークサイドロック(あるいは、ニュートラルゾーントラップ、1-2-2ウェッジチェック

です。この数字以外のうんちくは、先に挙げた(1)パックの奪回や(2)守備の組織化を具体的にどうしたいのかということを表しただけなのです。

2-3ウィークサイドロックならパックキャリアに2人で積極的にプレッシャーをかけ、パック奪回を試みつつ、残りの3人はやや引き気味で相手の攻撃に備えるということです。この場合特に「ウィークサイドロック」ですから、パックに近い方の側にいるディフェンス、リンクの中央付近にいるディフェンス、に加えて、パックから遠いサイド=ウィークサイド、つまり逆サイドにいるフォワードがほとんどディフェンスと同じくらい引き気味になり、逆サイドに攻撃が展開されるのを防ぐ(ロックする)わけです。これを常にレフトウイングが行うシステムは「レフトウイングロック」と呼ばれるわけです。

ニュートラルゾーントラップは、1-2-2や1-4、1-3-1などの隊形で使用されることが多いシステムです。この場合もっともパックに近い一人でさえもパックキャリアにあまり積極的にプレッシャーをかけずに、相手の攻撃を左右どちらかに方向付けるだけの役割を果たします。他の4人はというと、相手がパックを持った瞬間にニュートラルゾーン近くまで下がり、守備体系を整えてしまいます。ですから、相手はパックを持って振り向いたときには、攻撃の方向も制限され、しかもそっちには敵がうじゃうじゃいてまともにパスも通せないという状況になるのです。無理してパックを運ぼうとしたりパスを遠そうとすると逆襲を食らいますから、まさにニュートラルゾーンで待ち伏せして「トラップ=罠」にかけられてしまうのです。

「ウェッジチェック」というのはこのトラップを使うときに、パックを持っている相手をフェンスの方に追いつめて袋の鼠にしてしまうというやり方が「ウェッジ=くさび状」の袋小路に追い込むように見える、それだけのことです。だからこれも(フェンスに追い込む形の)ニュートラルゾーントラップの一種なのです。

お気づきかも知れませんが、これらはバスケのプレス、サッカーのゾーンプレスと非常に似た概念です。昔は1-2-2であれ2-1-2であれ、ほとんど(1)パック奪回ばかり考えてやっていたのですが、プレーヤーの技術力向上と共に、1対1でのパック奪回が難しくなり、「組織的にパックの動きを制限し、守りを固めつつパック奪回を狙う」ことに重点が置かれるようになったのです。

これはどの球技を見ても同じことです。球技は進化すると「中盤の攻防」になるのです。(従ってどの球技も見た目はつまらない方向に進化していく)というわけで、システムの名前も1-2-2のように数字で頭数を示しただけでは説明しきらないようになってきたので、うんちくを加えるようになった。ま、その程度のことです。 分かりましたか?

ちなみにこれは私なりの理解ですので他の人に聞けば他の回答が返ってくることでしょう。

それでは。