弱点発見!?

香港で仕事を開始しております。春のクリニック等の総括完結編を書こうと思っていたのですが、今日は現在進行中のスタンレーカップ決勝の話を、、、

シカゴがまたも事実上1点差の激戦を制してスタンレーカップ王手をかけました。クロフォードとラスクのゴーリー対決でもっとも話題になっているのは「ボストンがクロフォードの弱点であるグローブサイドを徹底的に狙っていて、事実第5戦では5点全てがグローブサイドに決まった!」という話です。

この話はさらに「現代のゴーリー先進国はフィンランドであり、ラスクはこの代表。クロフォードが苦手とするハイショットは今や時代遅れのケベックスタイルの弱点である」という、、、まぁ最近よく聞かれる議論(と呼べるほど根拠がない)に発展しています。フィンランドの著名なゴーリーコーチは「クロフォードはテクニックが低いので今すぐバックアップゴーリーに代えるべきだ」なんて言ってましたが、今日の結果見てどうなんでしょうね、、、こちらのCBS SPORTSの記事はそんな過熱した報道に釘を刺す冷静な分析です。

そもそも第5戦までのスタッツではクロフォードのグローブ側13失点に対してブロッカー側は17失点、、、第5戦でそれがグローブ側18失点/ブロッカー側17失点になって、それでもほとんどイーブンです(第6戦でグローブ19/ブロッカー17になりました)。グローブサイドの失点の方が少なかったなら、一体グローブ側を狙えという指示の根拠は何だったんだという話が書かれています。そして「現代のゴーリーはバタフライでボトムネットをほとんど塞いでいるため、ミドルからトップコーナーの失点割合が増えるのはごく当然のことである」と、これまたもっともなことを書いてくれています。単に「上が弱くなった」のではなく「下が強くなったので相対的に上の失点割合が増えた」ということです。全体としてのセーブ率、防御率、失点数が減っているわけですから、ゴーリーの進化の方向が間違っていないことは明白です。

私もクロフォードのグローブの動かし方には若干疑問がありますが、それでもまだ弱点と呼べるものではないと思います。ラスクが最先端のフィンランド式にTプッシュを使わずシャッフルとバックスケーティングだけでヌルヌル動いてショットに直角になれず、見事にバックドアにリバウンド出しちゃった、こちらの失点なんか、誰も弱点として指摘しないのは何故?

Patrick Kane Scores on Bickell Rebound

さらにラスクがポストに向かってブロックできないから、ほとんどクリーズかポストの外まで流れちゃうとか、攻めどころだと思うんですけどね。

しかし「クロフォードのグローブ」は、メディアを利用した戦略としてはある意味十分プロフェッショナルな攻め方です。正対不足などの弱点はメディアはもちろん現場の選手にすら伝わりにくいものです。私が知ってる限り、プロの選手でも、ゴーリーコーチに訊いてくることは「あのゴーリー、どこに打てば入るの?」であり、もっと重要な、正対の遅れや、パスアクロスやゴール裏など苦手なシチュエーションについて訊かれることはありません。

たいした根拠すらなくても「グローブの上が弱い」という情報を流してしまえば、チームはそこを徹底的に攻める理由ができます。「あれこれいろいろ試してみる」ことでなく「一貫して徹底的に攻める」方が、短期のシリーズでチームとしての集中を保つために効果的なものです。また、相手の弱点の情報を流すことによって、相手ゴーリーだけでなくチームにも疑念を抱かせて心理的に優位に立つことが出来ます。実際シカゴの監督もクロフォード自身も、「いきなり5失点もしてるけど、グローブサイドは大丈夫なのか?」というメディアからの度重なる質問に答えなければならなくなっています。強力なゴーリーやエースプレーヤーと戦うときは、とにかく一所を徹底的に攻め、疲弊させてこじ開け、それを「ついに弱点発見!」とメディアに書いてもらう、というやり方は今までにも行われてきました。その意味ではボストンのコーチは良い仕事してます。

ちなみにクロフォードはグローブサイドについて、記者の質問に「いやー去年は逆にブロッカーサイドが弱点って報道されてたと思うんだけど、今年はグローブなの?結局両方弱いって言いたいわけ?」とやり返してました(笑)

さて、シカゴは第6戦で優勝を決めることが出来るのか?それともボストンがまたもクロフォードのグローブサイドを攻略するのか???いろいろ書きましたが私はどちらのチームのホッケーも大好きですので、第7戦まで観られることを願っています。楽しみですね!

それでは。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です