決定力をつけるには?追補編2

さて、、、そもそもこの連載がスタートしたきっかけとなった、「決定力」の話にやっと戻りますが、日本的なメンタリティの中で大きく改善しなければならないのが、決定力のある選手を育てるためのコーチングと選手選考の基準です。

これは私自身が海外でのコーチングに適応するために学んだことですが、一般的に日本の指導者は「点取り屋の選手を手なずけるのが苦手」であると感じます。

オープン球技の中で、点取り屋と呼ばれる選手は、どんなレベルでもチームにほんの少ししかいません。世界最高レベルの選手しかいないNHLでさえ、チームの6割のポイントは4人の選手(だいたいFW3人とDF1人)があげているという統計もあります。守りやつなぎのプレーは、ほとんどの選手が練習である程度習得することが出来ますが、得点力ほど才能の差が現れる部分はありません。

この特殊な才能を持っている選手は、時としてわがままであったり、チームプレーを好まなかったり、献身的に守備をしなかったり、コーチに反抗したり、偉そうにしてチームの中で孤立してたりします。日本でも少なからずこの傾向が見られますが、日本以外の国々では特に顕著です。はっきりいって、我が強くない点取り屋なんて存在しません。

しかし、コーチとしては、どんなにわがままで扱いにくいプレーヤーであっても、点を取れるという唯一無二の個性を生かさない限り、最終的に試合で勝つことは非常に難しいでしょう。「うちはどのラインからでも得点できるチームワークと、献身的な守備で勝負するから、ワンマンプレーのストライカーは要らない」とか「うちのチームはスピードで勝負するから、スケーティング重視で選手を選ぶ。ゴール前で点が取れるだけではフィットしない」というなら、勝負どころでの決定力の無さは最初からほぼ諦めるべきです。

私もコーチとしてのキャリアが浅いころには、我が強い点取り屋の扱いを知らず、守備中心のチームプレーにフィットしないことで衝突したりしていましたが、結局のところ点取り屋を生かせないようなチームプレーで勝てることはありませんでした。点を取るラインは、自陣ではなく相手陣内でプレーし続けて初めて意味があるのであり、彼らが自陣でのプレーに専心しているようでは最初から勝ち目がない試合だからです。これは決して点取り屋を甘やかして放任すれば良いということではなく、むしろ逆に攻撃の自由を与える代わりに、チームのために点を取る責任をチーム全員の前で説き、そして、守りが必要な場面では守る、もしくはベンチに座っていることを納得させるだけの、厳しくかつ説得力あるコーチングをする必要があるということです。同時に、点はさほど取らなくても、献身的にプレーするラインへの賞賛を忘れてはいけません。好き嫌いにかかわらず「全員で守り、取るべき人が取って勝つ」というのが、現代的なボールゲームのあり方なのですから。

さてさて、長期にわたって連載してきました「決定力をつけるには?」ですが、そろそろまとめに入ります。ここまで書いてきておいていきなり前提をひっくり返しますが、国際舞台で本当に良い成績を残したいのであれば、そもそも日本のホッケーにもっとも足りないのは「決定力」なのか?ということが、マスコミやファンの視点ではなく、試合分析のプロの視点で綿密に分析されるべきでしょう。そしてその分析を行うプロ=技術委員が登用されるべきです。技術委員による分析は、サッカーの世界では当たり前に行われていますし、ホッケー先進国でも常識でしょう。そしてその技術委員会は、次の目標(一応オリンピックですかね?)に向け、足りない技術は何か?進むべき方向性はどこか?そしていかにしてそこに達するべきか?という指針をアマチュアレベルにまで示すべきです。指針はあくまで明確に、メンタル、体力、経験、決定力なんていう曖昧な言葉を使っても結構ですが、その課題をどうやってクリアするかの具体策がなければ、言葉遊びに過ぎません。

分析結果と末端の現場での指導が連動していることも非常に重要です。例えば、本当にシュートを決める力が不足しているという結論が出たのであれば、スケーティングの時間を削ってでもシュート力とスコアリング力を向上させるべきです。1点差で負けた試合の後に100周罰走をするのではなく、1000本シュートをする方がまだ意味があるはずです。

国際舞台での経験不足を唱えるのであれば、トップ選手は武者修行ではなく、トップレベルで競り合うことが選手としての日常になるように、海外のより高いレベルのリーグでプレーするべきでしょう。男子も女子も、日本と同レベルかそれより高い国々で、トップ選手がより高いレベルの国外リーグプレーしていないのは日本だけです。

そのためには、同時に、日本国内の競技構造を世界水準にすることも重要です。これは単純に競技レベルを上げることだけでなく、より高いレベルのリーグからスカウトされる構造を作るということです。現在、日本で競技ホッケーとして世界から認知されているのはアジアリーグだけです。インカレもインターハイも、どんなにレベルが高くても、いや実際低くないレベルだと思いますが、残念ながら世界から見れば草ホッケーの大会です(だってそもそもアジアリーグ以外英語でスタッツ出ないから名前すら分からなくてスカウトも出来ないし)。ということは、アジアリーグで18歳以下の選手がプレーできない限り、NHLやらKHLのドラフト網に引っかかる選手が現れるのは、世界選手権等でうっかりスカウトされるとして、まぁ20年に一回くらいしか起こりえないわけです。これではたとえどんなに現場レベルで素晴らしいコーチングが行われ、選手が世界を夢見て日々努力していてもその先がないのは当たり前です。

いかんいかん、、、例によって決定力から大きく脱線したまま話が終わりそうですが、この続きはまたどこかで、、、

それでは。

決定力をつけるには?追補編1

オリンピックを機会に書き始めたこの企画ですが、気づけばオリンピックも遥か昔ですね。 私が監督を務めた香港女子代表チームも、ついに世界選手権デビューとなるD2B予選で3月半ばにメキシコに行って参りました。結果、南アフリカに2-5、ブルガリアに2-4、メキシコに0-1で敗れ、初参戦・初勝利というわけにはいきませんでした。 ほぼ全員が大人になってからホッケーを始め、平均年齢が33歳以上と、対戦国より10歳以上年輩、練習も遠征も多額の自己負担、等々、多くの苦難がありましたが、特に最後の試合では、優勝したメキシコ相手に一歩も引かない戦いで0-1と大健闘でした。 また、「競技ホッケー」という概念が存在しなかった香港において、

  1. 選抜され
  2. 一貫して専門的コーチの指導を受け
  3. 氷上練習以外のトレーニングも行なう

という、初の本格的なホッケーチームの基礎を築くことができました。個人的にも今までの経験を生かし、久々に会心のチーム作りが出来たと思います。

その後4月には男子チームのアシスタントコーチとしてルクセンブルグで行なわれる世界選手権D3に行ってきました。結果、UAEとグルジアを破りましたが、北朝鮮、ブルガリアとルクセンブルグに完敗して4位で終わりました。D3とはいえ、上位3チームはすべてプロもしくはセミプロです。このレベルですら、上位に食い込むためには、香港ホッケー界の構造を根本的に変えていかなければいけないということですね。

さて、、、人の教えるチームにならば何とでも言えても、自分の教えるチームと環境ではなかなか上手くいかないものだと再認識しつつ、「決定力をつけるには?」の追補編です。

体格、体力に続きまして、こちらも敗因の定番である「メンタル」。

日本人はメンタルが弱いと勝手に思い込みがちですが、これは万国共通に思い込まれることのようで、ゲルマン魂すさまじいドイツ国民でさえ、サッカーで負けたときにはまっさきに「我が国民はメンタルが弱かった」と言われると聞いた事があります。 かく言う私も20年近く前からメンタルタフネス理論に触れ、活用・実践してきました。

アスリートだけでなく、人生一般で、メンタルタフネスの実践が有効であることは経験的にも承知しています。しかし、重要なトーナメントなどでの敗戦の理由を簡単にメンタル面を言い切ってしまう事には非常に抵抗があります。 繰り返しますが、敗戦の言い訳に「メンタル、体力、経験」を多用するチームや個人で、技術力では他を凌駕しているんだけれど、という例はほとんどありません。

メンタルタフネス、と言う概念やメンタルトレーニング、さらには今流行のビジネスコーチングも、実際には日々の練習(仕事)やアスリート(社会人)としての目標設定、達成過程などを明確にするため、つまりは技術、戦術を高め、精度を上げるために使われるべきものであり、試合前にメンタルトレーナーの話を聞いたから強豪に勝てるわけではないのです。

もちろんゴルフのパッティングやサッカーのPK戦など、特定の分野でメンタルトレーナーを活用する事例は多数あります。例えばイングランドはサッカーWカップでの度重なるPK戦敗退を受けて、代表に精神科医を雇っています。しかしこれはあくまでも試合の特定の局面の強化策であり、チームとしては、まずPK戦に持ち込むことなく勝てる方法を探しているでしょう。

メディアに出ている範囲内しか分かりませんが、今回スマイルジャパンの予選突破の原動力の一つになったと言われるメンタルコーチングは、どちらかというと北米で言うところの「チームビルディング」という内容のように感じます。毎年トライアウトで顔ぶれが変わり、個性と自己主張で満ち溢れる北米のホッケーでは、「チームのために、みんなで頑張る」という当たり前のことを自覚させるために、けっこうな労力が必要です。ですから、ある程度のレベルの競技ホッケーチームではシーズン前もシーズン中も、チームビルディングの各種イベントや個人、グループ面談が、コーチやメンタルトレーナー主導で行なわれるのが当たり前です。

こちらも想像ですが、日本で求められるチームビルディングは、北米と異なり、年功序列に縛られない健全な自己主張や、苦境にあってもリーダーシップを発揮できる環境作りにあったのではないかと思います。

日本でも代表レベルのホッケーチームにメンタルトレーナーが帯同するようになったのは画期的なことですし、おそらくオリンピック出場権獲得に大きく貢献したと思われます。しかし、オリンピックレベル本番では、明らかに技術、戦術で圧倒され、たとえ60分間「日本のホッケー」が出来ていても、一勝するには至らなかったでしょう。メンタル面の強化やチームビルディングは非常に重要ですが、それはあくまで技術・戦術の差が少なくなってきて、あと少しの差を埋めるための一押しです。

そして、おそらく国際舞台で勝ち抜くため、日本のホッケー選手にもっとも必要なメンタリティは、日本人同士のチームで競い合っているだけではなかなか得られないかもしれません。個性ぶつかり合う海外のホッケー界(といっても国によっていろいろですが)で、真剣勝負を年間何十試合も行なう環境にトップレベルの選手が身を置けば、サッカーなどでも「ハードワークで従順だが、柔軟性や想像性、リーダーシップに欠ける」と評されてきた日本的アスリートのメンタリティの殻を破る選手が多く出てくるでしょう。

結局のところ、国際試合で勝ち抜くメンタルを育てるには、トップレベルの選手が、日々真剣勝負を出来る国に行ってプレーするか、そういう環境を国内に作るしか方法がありません。女子も男子も、オリンピックやトップディヴィジョンの常連国では、トップリーグでプレーする選手が中心になっているか、もしくは自国にトップリーグかそれに近い環境が存在しています。

もし、本当に語学、その他の文化が原因で、日本人ホッケー選手が海外に進出しにくいのであれば、逆に国内リーグのレベルを国際的なレベルに高める方法もあります。特に女子では確実に可能です。これはまた機会を改めて書きますね。

さて、追補編2が最終回になるはずなんですが、なるべく早めに書きたいと思います。

それでは。

決定力をつけるには?後編

時事ネタ最終回は、敗因の言い訳ベスト3と呼ばれる、体格(体力、身体能力)、経験、メンタルです。「決定力をつけるには?」というテーマとは多少ずれますが、関連する点も多いので取り上げておきます。

まず、私の知る限り、この3つを言い訳にするチームで「スキル、戦術で相手を遥かに上回っていたのに、、、」という例を見たことがありません。残念ながら典型的なスキル・戦術弱者の言い訳といえるでしょう。

しかし、逆に言えば、誰もが言い訳に使う言葉だけに、しっかりと検証、研究されたことがない概念であり、成功への糸口もそこにあるかもしれません。例えば「本番に弱い」というアスリートへの評価は万国共通ですが、そこからアスリートのメンタルトレーニングを研究、実践したメンタルタフネス、スポーツ心理学先駆者たちは成功を収めています。東欧では、共産主義時代にアスリートの体格、身体的特性の遺伝を研究し、競技に適した才能を見出す方法論を確立しています。

現場での指導、育成方針を改善しなければいけないのは当然として、その他の領域に本当に改善の余地があるのか、また改善すべきなのかを考えてみました。

<体格改善>

ホッケー界で日本人の体格が劣っているのは明らかな事実です。スマイルジャパンの平均身長162cmは、IIHFの世界大会に出場している40か国中35位(1位はカナダ、アメリカの171cm)、平均体重59kgは34位(1位はアメリカの71kg)です。男子代表の平均身長178cmは46か国中43位(1位はロシア、チェコ、スロバキア、スウェーデン、ラトヴィアの186cm)、平均体重80kgは38位(1位はロシアの92kg)です。体格だけ比べてみれば、ボクシングで言うならば、国際試合では常に2~3階級上の選手と戦っていることになります。

各種格闘技で細かい階級分けがなされているように、体重と筋力には比例に近い関係がありますので、身体的接触を伴うスポーツでは特に体重が競技力に影響することは間違いありません。また、サッカーでもハンドボールでも、ゴールネットのサイズが一定である以上、ゴーリーの身長もある程度高い方が有利であることは明白であり、競技レベルが高まるほど、ゴーリーのポジションが高身長になる傾向があります。さらにゴーリー以外であってもホッケーのスカウティングでは良くも悪くも「サイズ」が重視されるので、よほど卓越したスキルが無い限り、残念ながらプロのホッケーチームが平均以下のサイズのプレーヤーを多数ドラフトして、多額の投資をすることは考えられません。

そう考えてみれば「世界と戦うには体格のハンディ、、、」とは言いますが、実際には日本より下位のデヴィジョンの国々も軒並み体格が良いのですから、世界ランキングで女子9位、男子22位というのは相当健闘していると言って間違いありません。ただし、単純なホッケー競技人口やリンクの数、経済規模等で、日本は世界のトップ10ですので、体格の不利を上回る環境の利点を持っているとも言えます。ですから体格の割には健闘しているが、環境を考えればもっと出来ることはあるはずだと考えるのが妥当です。

私はこのブログを書くまでは、日本国内でメジャースポーツである野球やサッカーの代表は、ホッケーよりはるかに大きな競技人口から選抜されるだけに、日本人の中でも体格が優れたアスリートが選抜されているはずだと思っていたので、(筋トレその他で改善できる体重ではなく)ホッケー選手の平均身長を向上させるには、マイナースポーツを脱する以外に手はないと考えていました。しかし、現実には、例えば世界トップレベルにあるサッカー女子代表は、アイスホッケー女子代表とほとんど変わらない身長ですし、サッカー男子代表、野球男子代表もアイスホッケーと大差ない体格です。対してバスケットボール、バレーボールやハンドボールなど、より高身長が有利な特性では、当然日本代表の平均身長も高くなっています。例えばハンドボールの男女代表はホッケー強豪国に匹敵する体格(男子183cm、85kg、女子167cm、61kg)です。

[2012-13男子日本代表]
アイスホッケー 179cm 80kg
サッカー 179cm 74kg
野球 179cm 82kg
ハンドボール 183cm 85kg

[2012-13女子日本代表]
アイスホッケー162cm 59kg
サッカー 163cm 56kg
ハンドボール 167cm 61kg

つまり、単純に日本人の平均身長が低いからホッケー選手の身長も低い、というわけではなく、「競技特性と、各競技のリクルート過程、育成、選考基準が選手の身長を何となく決めていく」とも考えられます。もう少し分かりやすく言えば「背の高い子供達は何となくバレーボールやバスケットボール、ハンドボールを選び、また、背が高いという理由でそのような競技にリクルートされ、選抜過程で生き残りやすい」という仮定です。この傾向はおそらく日本以外でも大差なく、北米には10代前半で180cm以上の子供達も珍しくありませんが、より高身長向きといわれる競技に流れていきます。超高身長の若年ホッケー選手は”He should play basketball.”と、よく言われています。

長々と書いてきましたが、問題は「日本のホッケーの強化のために、ホッケー選手の体格改善をする努力をすべきか?そしてそれは可能か?」ということです。私はすべきだと思いますし、可能だと思います。先述したように、サイズ面だけを基準に比べるならば日本代表は世界最下位レベルの体格ながら、ランキングでは非常に健闘していますが、現在のサイズでは世界に挑戦する限界に近づいているかもしれません。これからサイズに関わらずホッケーそのものの質を上げなければいけないのは当然ですが、サイズがある選手が増えることで、まず、より高いレベルの海外リーグに挑戦しやすくなります。私は強豪国のプロスカウトと話したときに、こう言われました。

「まずはサイズがあって、上手いプレーヤーを紹介して欲しい。現時点では、日本のレベルでいくら上手くても日本のリーグは世界水準に無いので、本場で通用するかどうかを計る目安にならず、契約の可能性が極めて低い。さらにサイズがなければ可能性はゼロに近くなる。サイズがあって上手い日本人が一人成功すれば、そこから可能性は広がる」

フェアではありませんが、これも現実の一部です。また、国内リーグのサイズアップを図ることで、国際試合との差が少なくなる利点もあります。本当に世界との差を縮めたいのであれば、強豪国で戦う選手を増やすか、国内の環境を強豪国に近づけるしかないので、サイズのある選手を増やす、というのは間違った方向性ではありません。サイズのない選手も、国内でより多くのサイズのある選手に囲まれてプレーしてこそ、国際舞台で通用するプレーを身につけることができるはずです。

それではどのようにしてサイズアップを図るか?これはリクルートと育成方法と、コーチの意識を大胆に変え、高身長の子供達をホッケーに誘導するしかありません。他競技では既に、バスケットボール協会が「ジュニアエリートアカデミー(ビッグマン&シューター)」、サッカーでは、なでしこジャパンが「スーパー少女プロジェクト」という形で実施しています。いずれも、高身長の子供を、競技歴問わず募って育成するプロジェクトです。アイスホッケーには「スケーティング」という大前提があるので、例えば、「滑れないけど背が高くて、身体能力が高い中学一年生を発掘してゴーリーにする」というと、無理があるように聞こえるかもしれませんが、「スケーティングの特訓は出来ても、身長は高くする特訓をすることことは出来ない」のですから、指導の方法論さえしっかりしていれば、やってみる価値はあります。

一般的に、早く高身長になる子供は、コーディネーションやバランス能力が追いつくまでに時間が掛かるため、身長が低くて機敏に動く子供に比べてスケーティングに難があり、「背は高いけど、動けないからダメ」と言われてしまう例を、国内外で見てきました。しかし、それでも “You can not teach size.” であり、心身の成長バランスが崩れるクラムジーの影響が大きい、高身長の子供達の正しい育成方法を研究すれば解決できる問題です。実際北米の高身長選手は、18歳くらいまでスケーティングはイマイチ、いやかなり下手だったりしますが、その後プロになるまでに専門的なスケーティング練習で挽回することが多く、大きく、上手くなられると、完全に歯が立たなくなってしまいます。

身長、体格を基準にしたプロジェクトには違和感もあるかもしれませんが、体格はアスリートの立派な才能であるどころか、現代表に欠けている要素であるならば、それを補うプロジェクトを行うのも一つの強化です。サイズがないことを前提に強化方針を考えるだけで、サイズを上げる方法を考えなければ、身体能力が高く、高身長のアスリートはホッケーを選んでくれないでしょう。野球のダルビッシュ選手やサッカーの城選手のように、身体能力が世界レベルで、高身長だったホッケー少年が、最終的に他の競技を選んで成功している例も現実にあるわけですから、、、

体重、もこれまた非常に重要なのですが、これはまたの機会に書きます。

最後に、繰り返しますが、サイズに関わらずホッケーそのものの質を上げなければいけないのは当然です。また、決してサイズが全てを解決するのではなく、技術や戦術不足を安易にサイズ不足に置き換えてはいけません。しかし、国際的競技力向上のために、サイズそのものを向上させる方法を模索する価値は大いにあります。

さて、次はメンタルと経験の問題です、、、

あ、後編でも収まらなくなってきましたね。じゃ、追補編で!

それでは。

決定力をつけるには?中編

時事ネタ中編です。

サッカーでもホッケーでも指摘される決定力不足を解消するための、気の長い改革案です。きっかけはソチでの女子代表ですが、主に自分自身のコーチングの向上のためのブレインストーミングです。

  1. シュート練習>従来のスケーティング練習
    世界のリンクで様々なレベルを見てきましたが、日本人はシュート力が世界最弱の部類に入ると思います。なんといっても、シュートスピードがない。非アジア人種は、たとえスケーティングがヘロヘロのオッサンホッケーで、体重移動も何もない手打ちのシュートでも剛速球を飛ばせることは良く知られています。いや、アジア人と言っても、ここ香港の子供や大人だってかなり良いシュート打ちます。スケーティングはさらにヘロヘロですし、パスする気もゼロですが(笑)
    しかし、日本人といえばスケーティングと呼ばれるほど、スケーティングは滑らかで、直線のスピードだけならNHL並みの選手が過去に何人もいたと思います。遺伝的特徴もあるかもしれませんが、これは文化だと私は思います。なぜなら、日本人は「シュートよりも何よりも、スケーティングが大好き」だからです。まずチームの練習でスケーティングの占める割合が非常に高い。そして一般滑走までしてスケーティングを極めようとするのは日本人だけです。
    ホッケーにおけるスケーティングの重要性については異論ありませんが、今までの日本人が、本当にホッケーに必要なスケーティングの質を獲得するために適切な量の練習をしてきたのかというと、答えはNoでしょう。トップレベルのホッケーを分析すると、ホッケーでは直線的に常に速く走ることではなく、必要な時に、必要な場所に、タイミングよく走りこむスケーティングの方が遥かに重要だということがわかります。
    つまり、まずは従来の走りこみスタイルのスケーティング練習からスピードに強弱をつけたり、走るコースを工夫する実用的なスケーティングに切り替え、さらに時間を減らす必要があります。心配しなくても日本人のスケーティングの特性は多少スケーティングの時間を減らしたからといって簡単には失われないでしょう。この辺はまた別の機会に書きます。
    そして、スケーティングの練習時間そのものを思い切って減らして、その分シュート練習に大胆に時間を割くべきです。ロシアやチェコのリンクの横にはたいていシュート練習用のケージがあり、そこで子供たちがシュートを打ちまくっています。多くの少年チームが、一般滑走の代わりに、毎日陸上で様々なシュートを30分打ちまくる練習を10-18才まで続けるだけでもシュートのレベルは上がるでしょう。氷上練習でもスケーティング20分を10分にして、代わりに壁打ちをヒタスラ繰り返すだけでも数ヶ月で効果があるでしょう。とにかくまずはシュートのスピードと狙いを向上させないことには、この後に書くスコアリング練習も意味を成さないからです。
  2. 個人戦術、グループ戦術としてのスコアリングを練習する
    個人技術としてのシュート力を高めながら導入しなければいけないのは、戦術としての個人戦術、グループ戦術としてのスコアリングです。どんなに足が速くてもホッケーで使えるかどうかは別、と書いたとおり、NHL選手よりも速いシュートを打ててもECHL止まりだった選手も何人もいます。
    DF、ゴーリーのタイミングをずらして騙す、ゴーリーにパックを見せない、DF、ゴーリーを横に動かすという「得点しやすいシュートに結び付ける戦術」がスコアリングであり、それを練習する必要があります。
    この100年言われているように「シュート打ってリバウンド」でも悪くはないのですが、「ゴール裏を動いてゴーリーを横に動かして膝をつかせておいてファーサイドのパッドに当ててバックドアでリバウンド」にすれば、得点確率は格段に上がります。
    「ゴーリーの目の前に立ってスクリーン」も勿論良いのですが、逆に「わざとゴーリーのブロッカーの前に立ってパックを見せておいて、シュートのタイミングで顔の前に移動してブロッカー側に打ってもらう」プレーをすれば、ゴーリーが完全に反応できる可能性は極めて低くなります。サメのマークで有名なNHLチームでは、高さを変えて左右からスクリーンになって交差するように横切りながらディフレクション、なんてプレーを実際に練習してました。プロでも点を取るために具体的な工夫をしてるんです。
    一人でロング、もしくはミドルシュートを打つ場合でも、DFの前でパックを横に動かしてからクイックリリース、というのがトップレベルで頻繁に使われるスコアリング法です。多少シュートが弱くても、ゴーリーとDFを横に動かしてから打つので得点の確率は高まります。ちなみに私も攻撃力が弱いチームを教えている時に「とにかく外から打ってリバウンド」と言っちゃうことはありますが、正直言ってそれ以外にスキルで対抗する手がない時がないときだと自覚しております。走力と知識で補うことが出来る守備と違い、スコアリングを改善するには選手の育成を10年遡って根本的な改革をする以外に手はないのです。
  3. ゲームコントロール能力をつける
    スピードを生かしてフォアチェックでパック奪回、という戦術はたしかにある程度通用していますが、他の集団球技と同じく「小さくても、スピードを生かして、一試合しつこく走りぬいて戦えば、格上相手にも、、、」という戦略が成功することは稀です。問題は「一試合しつこく走りぬいて」という部分です。よく走り、スピードのあるチームほど、攻め急ぎ、守り急ぎ、まるで相手にパックを渡してしまいたいかのようにプレーしてしまうものですが、残念ながら格上のチームは、そんな相手のゲームのスピードを落としたり、相手の体力を消耗させる方法を熟知しています。スウェーデン女子を見ていると、日本の激しいフォアチェックを見切ったら、落ち着いてブレークアウトをして、DFが中盤でパックを持っても攻め急がず、サッカーで言うところのビルドアップをきちんとして、パックを失わないように攻め込んできていました。
    この辺りも、10年がかりで文化を変えないと達成不可能だと思われます。スケートの速さではなく、チームとしてのプレーの速さや、逆にスピードを落としてチームをコントロールするタメ、判断力、シュート数ではなくスコアリングチャンスの数、運動量で当たりまくるのではなく、スマートに堅実に守り攻撃につなげる、などを基準に選手選考が行われるようになる必要があります。
    これはすなわち選手を選び、評価する指導者のホッケー観が変わらなければいけないことを意味しますし、そのような指導者を選び、任せるマネージメントの意識改革も求められるということです。気の遠くなるような話ですが、全国という規模ではなく、実は地域や、チームレベルの現場から変えていける部分も多いと思います。

さらに後編に続きます。

避けては通れない、体格と身体能力、メンタルと経験の差などについて、私の思うところを書きます。

それでは。

決定力をつけるには?前編

ご無沙汰していました。

昨年末に行われたChallenge Cup of Asia D1 で、私が監督を務める香港女子代表はシンガポール(7-1)、タイ(4-0)、UAE(9-0)を下して全勝優勝を果たしました。香港女子代表初の国際大会を良い結果で終えることが出来て良かったです。また私自身初めてナショナルチームを指揮させていただき、非常に良い勉強になりました。応援してくださった皆さんありがとうございました!

3月にはこの女子代表を連れてメキシコに行き、世界選手権D2B予選を、4月には男子代表のアシスタントコーチとしてルクセンブルグで世界選手権D3を戦う予定です。

さて、私が指導するレベルの遥か遥か雲の上の最高峰の舞台、ソチオリンピックでは日本女子代表が奮闘しています。

残念ながらBグループ全敗で順位決定戦に回っていますが、英語版の解説やプロコーチたちからの論評など、海外での評価は非常に高く、大会の大きな驚きの一つとして伝えられています。一番高く評価されているのは「スピード」と「チームプレーに徹する規律」を生かしたフォアチェックを中心としたシステマチックな守備です。

過去にも日本人ホッケー選手のスピードは世界で認められてきましたが、必ず「でも、スピードを生かせていない」という評価が続き「100万ドルの足、1セントの頭」なんて、非常に不名誉なことを解説者に言われたりしてました。「サイズが足りない部分はスピードとチームプレーでカバーすれば、、、」という台詞はホッケー以外のチームスポーツでも頻繁に聞かれてきましたが、実際それを戦術で表現し、且つ機能させた例はあまりなく、「とにかく攻守に走って運動量で勝負する」という、バカ走りをする意気込みだけで終わることがほとんどでした。その点今回の女子代表は「何をしようとしているのか、はっきりと戦術の意図が分かるチーム」「全員が同じ戦術を徹底している」「明らかに劣る体格でも、格上のチームに劣らない戦い方が出来ることを証明している」「ロシアの監督は、タレントで優っていても、チームとしては負けていることをはっきり分かっている」「足りない部分を求めるのではなく特長を生かして勝負する画期的なチーム作り」と、素晴らしい評価を受けています。

「日本のホッケー」という言葉は過去に飽きるほど聞きましたが、それを実際外部から認めてもらったのですから歴史的なチームです。また、今まで破ることが出来なかった予選の壁を破り、さらに世界選手権でもトップディヴィジョンに返り咲いているので、トップレベルに上がって行く方法論としては間違っていなかったと言えます。

一方、オリンピック本番のBグループ、つまり下位4チームの組で勝てなかっただけでなく1点しか取れなかったことで、多くの課題が見えてきたのも確かです。ランキングから見ても格下の日本チームが、フォアチェックとDZカバリジを基本にした守備的戦いをして、カウンターとパワープレーに攻撃の活路を見出そうとした戦略は弱者の正攻法であり、間違いではなかったと思います。歴史的に、番狂わせと呼ばれる試合で、点の取り合いになったことはほとんど無く、ロースコアに持ち込むことはほぼ必須の条件だからです。ガチンコ本番で強敵相手に「負けても良いから攻撃的なホッケーで」というと、点は多少取れても勝てることはほとんどないでしょう。

とはいっても、守り勝つためにはある程度の得点が必要です。シュート力は男女日本人選手が世界と一番差があるスキルなのは周知の事実なので、そこはゴール前のディフレクションなどで工夫していた、みたいな記事は見かけましたし、とにかく外からでも良いからどんどんスロットにパックを入れてリバウンドを、、、という記事もありました。

しかし、残念ながら、外から入れて泥臭くリバウンドという戦術?みたいなものは、一昔前の北米の戦術というかメンタリティであり、シュートやパス、そして身体が強くないとあまり機能しません。シュート力が弱くなればなるほど、ゴール近くからクリーンに打たないと入らなくなるからです。しかしゴール近くに個人技で迫るには、これまたサイズがないから難しい、、、というのが、現在まで続く得点力のなさの原因だと推測されます。

じゃーどーすれば得点力が上がるんだよ?という、私自身の疑問に答えるべく、いろいろと考えをめぐらせてみたのですが、長くなりそうなので続きは次回に、、、

それでは。

香港アイスホッケー男子、女子代表チーム、指導開始!

FaceBookTwitterでは定期的に発信してましたが、こちらのブログでは非常にご無沙汰しておりました。

香港でもホッケーシーズンが始まり、私の勤める香港アイスホッケーアカデミーでも強化から普及まで様々なプロジェクトが始動しています。 そして、26年ぶりにIIHFの世界選手権(D3と、女子はその予選)に復帰する香港代表チームも、男子+U18男子と女子のトライアウトを経てトレーニングを開始しました。私は男子チームのアシスタントコーチと、女子チームの監督、そして代表と、その育成年代のゴーリーコーチを任されることになりました。

日本のようなアジアの先進ホッケー国とは違い、香港では代表選手もすべてアマチュアであり、遠征費どころか代表の練習費用も基本的に自己負担です。通常のサイズのリンクが国内に一つしかないので、練習回数も非常に限られており、そのほとんどが休祝日の夜です。おそらく日本の地方の県代表以下の競技環境で世界大会を戦わなければなりません。

とはいっても他のD3の国々も似たような条件ですので言い訳は出来ません。 しかし、D3の新興国でも、最近は非常に積極的に優秀な指導者を雇って強化を図っているので、実力は年々上がってきています。昨年男子D3を制した南アフリカは元NHL育成コーチだったBob Manciniが率いていました。香港の隣国台湾は5年前から私の友人でもある元ハンガリー代表のKristof Kovagoを迎えて一貫した強化を行っています。

そして香港男子代表の監督は、香港アカデミーのGMで、NHLドラフト全体2位指名、元ニューヨーク・レンジャーズ主将、NHLオールスター5回選出、グレツキーと共にカナダ代表でもプレーした、ホッケーレジェンドのBarry Beck氏です。Beck氏は引退後ホッケースクールの運営やジュニアチームコーチなどを経て香港に渡り、7年間もホッケーの普及と強化に尽力しています。

女子のアシスタントコーチはバンクーバーオリンピックで中国女子代表のアシスタントキャプテンを務めた譚安琪、、、過去、日本の前に何度も立ちはだかった中国女子代表の、まさに中心選手でした。彼女も引退後香港でホッケー指導者としてのキャリアを積んでいます。

そんな強者達に紛れ、うっかり名を連ねてしまった私は、20年以上のホッケーコーチ生活で初めてのIIHF世界選手権代表チーム監督/コーチ業となります。世界ランク最下位近くの香港ですが、代表は代表。私のように、一人のホッケーコーチとして生きるために世界を流れ流れて来ただけの人物を雇ってくれた香港アカデミーと、さらに代表監督/コーチにまで選んでくれた香港アイスホッケー協会には感謝の言葉しかありません。

とにかく限られた競技環境ですので、十分な準備が出来るなんて言うことはできませんが、有給を削り、身銭を切ってトレーニングをする代表選手達と、それを支える人々が胸を張って帰って来られる結果を残せるように、知恵を絞りたいと思います。

よく考えてみれば私のホッケーコーチとしてのスタート地点は、基本的に未経験者しかいない筑波大学女子ホッケー部です。アジアリーグでプロのコーチも経験したとはいえ、プレーオフに進出したことが無く、未払い上等、時には切手代さえも払えないような弱小・赤貧チームでした。カナダでもアメリカでも、AAAとはいえ、エリートと呼ぶにはほど遠いチームを率いていましたし、シーズン開始時にはAレベルも怪しいようなチームを教えたこともあります。そういえば、契約なんてあってないような国で給料が滞り、家賃はおろかバス代すら払えないような日々もあったっけ(奥さんごめんなさい!)。

そう考えれば、まともなリンクすらなく、基本自腹、その他問題山積で、目下世界ランク最下位くらいの代表チームでの挑戦、、、これこそボヘミアンホッケーコーチの望むところです!

少なくとも生活はちゃんとできてるし(笑)

いやぁ、面白くなってきました!

それでは。

世界の女子アイスホッケー (5) 番外編1

IIHFのウェブサイトにこんな記事が、、、

昨年の女子世界選手権トップデヴィジョンで、衝撃の3位入賞を果たしたスイス代表の立役者であるゴーリーFlorence Schelling。彼女はボストンにあるNCAA D1の名門Northeastern 大学で4年間プレーした後、大学に残って経済学の学位を取る傍ら(一応言っておきますが北米屈指の名門大学ですよ)、カナダ・ケベック州のモントリオールでインターンとして働き、さらにブランプトン(オンタリオ州)から、各国代表が集う女子シニアリーグの最高峰CWHLに参戦しています。ボストン、モントリオール、ブランプトンはそれぞれ1000km以上離れており、その3都市を駆け巡りながら勉強、仕事、練習、試合に励んでいるわけです。

彼女は4月にカナダで行われる世界選手権でプレーした後大学を卒業し、故郷のスイスに戻り男子のプロリーグでプレーしながらソチオリンピックに備えるそうです。

女子アイスホッケーを取り巻く厳しい環境は基本的に世界共通です。世界3位の国の正ゴーリーが、仕事、勉学と両立しながらより高いレベルでの競技を続けるために世界中を駆け回っているのです。

詳しい事情は知りませんが、これまでの彼女の道のりは、国や連盟やスポンサーが用意してくれたものでしょうか?おそらく違います。多くの助けがあったとしても、これは基本的に彼女一人で切り開いた道であり、その戦いはこの先も続きます。

世界レベルで戦うために、スポンサーや連盟の力による環境の向上も大事ですが、本当に重要なのは、選手一人一人が世界で戦う意志であり、競技しながら生きる道を模索する情熱であり、そのために必要なのは外向きのメンタリティです。

ちなみにこんなスーパー女子プレーヤーである彼女のボーイフレンドはNHL選手であることも知られており、私生活も手抜き無しです。いやはや、、、

それでは。

注:ソチオリンピック関連の記事等で当ブログの内容を二次利用される場合は、事前に若林弘紀までご連絡頂くようお願いします。

世界の女子アイスホッケー (4) 中国編

アメリカ編カナダ編ヨーロッパ編と、3回に渡り世界の女子アイスホッケー事情を紹介してきましたが、それらは基本的に競技人口を増やしながら、国内リーグや国際リーグを整備し安定した競技構造を確立して競技力向上を目指すという、正統派の方法論の下強化を進める国々の話でした。そして、世界最大、最強の国々でさえ、女子アイスホッケーのプロリーグは存在せず、代表選手達は本業や学業の傍ら競技を続けていることを紹介しました。

しかし、選手・スタッフ全員が女子アイスホッケーを事実上本業として、近年まで世界のトップクラスで戦ってきた国が唯一存在します。それは中国です。

アイスホッケー中国女子代表チームは1992年に女子世界選手権に初参戦以来、2000年代初期まで世界4-6位をキープし続けて、カナダ、アメリカに続く第二グループをフィンランド、スウェーデンと共に形成してきました。1998年の長野オリンピックではアメリカ、カナダ、フィンランドに続く第4位、2002年のソルトレークシティオリンピックでは7位、その後徐々にランクを下げ始め、2006年のトリノオリンピックは出場を逃したものの、2010年には日本代表に競り勝ってバンクーバーオリンピック出場を果たしました。その後は国家の支援体制が変わり、デヴィジョン1Bまで落ちてしまいましたが、近年日本に取って代わられるまで、アジアの女子アイスホッケーを牽引してきた存在でした。

中国女子の強化方法は他の共産主義の国々と同様、少数精鋭で徹底したエリート教育を行うものでした。2012年、中国の競技人口は若干610人で、女子はたった184人です。アイスホッケーは、近年北京などの都市圏で富裕層のスポーツとして急激に発展を遂げつつあるものの、依然として競技ホッケーの中心は東北のハルピン、チチハルにあり、男女の代表選手もほぼ全員がその二都市の出身です。

中国女子代表は一昔前までは常に旧ソ連系のコーチを招き、通年で合宿を行って強化して来たと言われますが、トリノオリンピック出場を逃した辺りから北米のコーチを招いて強化体制を変化させて来ました。私はアメリカのある女子強化キャンプで、2005-06年に中国代表を率いたRyan Stoneと共に教える機会があり、彼から中国代表の貴重な内幕を聞くことが出来ました。

Ryan曰く、

「中国の女子の競技ホッケーの正式なチームはほんの数チームしかない。代表の下部組織となる体育学校を卒業した時点で、代表チームに入るかどうか振り分けられ、代表になった時点で彼女たちはホッケーが仕事になり、朝から晩まで一年中ホッケー選手としてトレーニングすることになる。休暇は1年に1週間程度しかなく、全員が合宿所で共同生活をし、トレーニングをする。代表には15歳から29歳までの選手がいるが、いわゆる学校の一般的な教育は行われず、1日2~3回の氷上練習と陸上トレーニング、ミーティングが彼女たちの仕事になる。ミーティングでは毎回の練習をノートに書き写したかどうかが厳しくチェックされる、、、」

そして、選手とスタッフが暮らす代表選手の合宿所は、、、逃げられないように外から施錠されていたとのこと、、、それを知ったRyanが焦って

「そんなことして火事でも起きたらどーするんだ?」と、責任者に訊くと

「それは、、、その時考える」

と答えたとか、、、ヒエーッ!

うーん、まさに社会主義的選手育成方法です。そりゃ少数精鋭で強くなるわけです。しかし、練習量は十分すぎるとしても、実戦経験はどうするんだと思ったら、それは中国国内の男子(高校生くらい)のトーナメントに出場したり、中国男子代表のOBチームと試合を繰り返していたようです。

さらに、Ryanが率いた年には、チームごと1ヶ月間フィンランドに遠征して、フィンランドのトップリーグのチームと転戦したとのこと。その後中心選手数人はフィンランドに留まってシーズン終了までプレーしたそうです。

さらにカナダ人のSteve Carlyleに率いられた2007-08年には代表チームはカナダ・アルバータ州に渡り、セミプロリーグWestern Women’s Hockey Leagueに参戦しました。トリノオリンピック出場を逃した後、外国人監督を招き、代表チームごと他国の最強リーグに送り込んで実戦経験を積ませるという大胆な強化策はバンクーバーオリンピックに返り咲くことで実を結びました。

しかし、先に述べたように、その後中国女子代表は低迷。男子代表も一時期は女子と同様の強化体制で日本と良い勝負をしていた時代もありますが、今や韓国にも抜き去られてしまっています。中国はサッカー女子代表も一時期世界のトップグループでしたが、その後低迷しています。共産主義的な強化体制の下では、対費用効果の高い個人競技の強化が優先されています。20人を強化してもメダル一つにしかカウントされない競技は、国際的な普及度が低く、トップグループで競り合えるうちは強化資金が出ても、他国の競技力が上がりメダルに手が届かなくなってきた時点で見切りを付けられたのかも知れません。

競技人口が少なくまともなプロリーグが存在しないマイナースポーツでは、少数精鋭で集中的に投資して強化した方が、底辺拡大して大きな競技ピラミッドを構築するよりも短期間で効果が出やすいとことは、共産主義国家のスポーツの歴史で証明されています。また、アメリカのNTDP代表育成プログラムもU17、U18の通年代表を編成しているという点では似たような方法論を取り入れており、ここでも近年抜群の効果が上がっています。

しかし、やはりある程度の普及や育成プログラム(feeder program)を作らないと、長期的な成功に導くことは難しく、国家や企業のスポンサーが手を引いてしまった時点で、その競技の発展がなくなり、終焉に向かいます。

その国の経済力や競技施設のインフラに見合った競技人口を維持し続け、効果的な育成が出来る競技構造を構築し、その頂点にはしっかりと投資して強化する、、、言うのは簡単ですが、多くの人の理解とサポートが必要であり、非常に難しい課題です。

昨年IIHFの理事会で、アジア代表の副会長として香港のThomas Wu氏が選出されました。彼のアジアのアイスホッケー発展ビジョンの中心には中国アイスホッケーの再興とビジネス化があると聞いています。また、欧米のホッケービジネスは、新たなマーケットとして中国に注目していることも間違いありません。低迷する中国女子代表が再び輝くときが訪れるのでしょうか?

それにしても中国代表選手達、一般的な教育も受けずに育って、引退後はどうなるのかと思ったら、

「男子も女子も、代表選手は引退後警察での仕事が保証されている」

とのことです、、、うーん、ホッケーが上手かった時点で将来は警察官なんですね、、、ただし近年では代表を努めた選手には奨学金を出してレベルの高い大学に進学させたり、ホッケーコーチとして香港に派遣させたりするなど、それなりの「ご褒美」も出すようになっているようです。

そして、Ryanがハルピンで代表を教えていた頃、私は日光バックスのコーチをしており、遠征でハルピンに来ていました、、、なんとその試合(対ハルピン戦)をRyanはスタンドから観ていたらしく、

「なんかねー、、、速いんだけどパスレシーブが雑で、あまり上手いホッケーではなかった」

との感想が記されていました、、、そうですか、、、スミマセン(汗)

それでは。

注:ソチオリンピック関連の記事等で当ブログの内容を二次利用される場合は、事前に若林弘紀までご連絡頂くようお願いします。

世界の女子アイスホッケー (3) ヨーロッパ編

その昔、私が筑波大学に行っていた頃、、、たまに大阪の実家に帰って来てなじみの散髪屋さんに行く度に、散髪屋のおばちゃんに、

「若林君はあれか、東京の大学行ってるんやろ?」

と、言われたものです。そしてその度に、

「いや、筑波大は茨城県やから!」

と、突っ込んでもなお、帰り際には、

「東京の暮らしは大変やと思うけど頑張りや!」

と、励まして貰ったものです。おばちゃんにとって「関東の辺りはだいたい全部東京」であったように、私たちは全ての海外事情はだいたい「向こうのこと」であり、具体的にはだいたい「欧米のこと」をイメージして語っているようです。かく言う私も、その昔、無謀にもホッケーコーチとして世界に出て勝負してみようと思いついたとき、「向こうに行けば、何とかなる。ホッケーといえばカナダだから、とりあえずカナダとか!」と、極めて単純に行き先を決めたものです。それで本当に行けてしまったのが幸運だったのか運の尽きだったのかは未だに分かりませんが、実際カナダでコーチとして仕事を始めて、実は自分は「向こうのこと」についてあまりにも知らなかったことを思い知らされました。

「カナダのホッケーは、ダンプ&チェイスでフィジカルに行って、とにかくシュート打ちまくる」

なんていうステレオタイプは、もちろん正しい場合もあるのですが、カナダは広く、地域によってもプレースタイルが異なります。さらに星の数ほど居る優秀なコーチ達はそれぞれの理想とするホッケーを掲げて日々戦っていますから、それこそコーチの数だけスタイルは存在します。それはアメリカでも同様でした。私はヨーロッパのホッケーに関しての知見はまだまだ不足していますが、少なくとも今まで訪れた国々のホッケーはそれぞれ特徴的で、簡単に「日本人に合っているのはヨーロッパスタイル」なんて標榜するのは不可能だと感じています。

世界の女子アイスホッケー (1) アメリカ編(2) カナダ編と、「さすが向こうでは女子ホッケーの環境が全然違う!日本は少ない競技人口で選手がバイトしながら、、、」と、特にアメリカ編では誰もが納得できるほど贅沢な環境を紹介しましたが、実は北米以外の「向こう」の環境は大違いです。

1990年に第1回女子アイスホッケーの世界選手権から2000年まで10年にわたり、カナダ、アメリカ、フィンランドの順位は不変でした。その間唯一の例外は、1998年に初採用となった長野オリンピックで下馬評を覆してアメリカが優勝した事件だけでした。また、4番手と5番手はスウェーデンと中国というのが定番でした。

2001年に、男子ではホッケー超大国であったロシアがついに初めて3位に食い込み、2005年にはスウェーデンが3位になり、翌年のトリノオリンピックではなんとスウェーデンが準決勝でアメリカを破り準優勝に輝き、2007年にも世界選手権で再び3位になるなど、躍進を果たしました。

その後2008-11年まではフィンランドが再浮上してスウェーデンとの3位争いを制していたのですが、昨年ついにスイスがフィンランドを破り世界3位となりました。またチェコがトップリーグに昇格して、男子と同様カナダ、アメリカ、ロシア、フィンランド、スウェーデン、チェコのビッグ6と呼ばれるホッケー超大国が女子のトップデヴィジョンに揃いました。

以上、女子ホッケーの歴史を紐解くと、プロが存在しない女子ホッケーでは、競技人口と、大学での育成環境が突出した北米二国がトップを独走し、フィンランド、スウェーデンの北欧二国が長く3位争いを続けてきたことが分かります。

フィンランド、スウェーデンの女子リーグはカナダのCWHL同様、セミプロもしくはアマチュアに近い環境であり、スポンサーからの補助で運営するものの、ホッケー漬けの生活を送れるわけではなく、給料は出ません。両リーグともに2-3名の外国人選手枠があり、NCAA D1などでプレーを終えた選手や、ヨーロッパ各国のトップ選手がプレーする場となっていますが、交通費や生活費の補助、教育や就職の斡旋などは行うものの、報酬はないようです。

北欧二カ国に続くスイス、ドイツ、ロシア、オーストリア、イタリア、イギリス、チェコなども基本的な環境は変わらず、自国の選手はアマチュアとして勉強や仕事をしながらプレーしています。外国人助っ人は交通費や生活費の補助の他、チームから紹介されたアルバイト的な仕事、例えば少年ホッケーチームの指導補助や、ホームステイ先の子守などで生計を立てられるようにしているチームもあります。さらにロシアなどで潤沢なスポンサーを持つチームは、外国人選手にそれなりの給料が支払われる場合もあるようで、この場合チームとしてはプロでなくても選手は一部プロということになります。

また、日本と共に最終予選を勝ち抜いたドイツ女子代表では、軍がスポーツをサポートする制度があり、中心選手たちは軍から給与を貰いながら競技に集中できるようです。しかし、女子トップリーグのほとんどのチームは週一回の練習しか出来ず、しかも1/3面しか使えないときもあるということですので、恵まれていない競技環境は日本の女子だけではありません。ちなみに競技人口は世界3位のフィンランドが約4,000人で、その次のスウェーデンが約3,500人、続いて日本が約2,700人ですので、北米二カ国を除けば大差ないということです。

このように、ヨーロッパの女子ホッケー全般に、潤沢なスポンサーが付き、選手がホッケーだけに専念できるような環境はほとんどなく、選手は仕事や学校に勤しみながら、週2-3回の練習と試合をこなしています。

おそらく日本と大きく違うのは女子ホッケーの競技構造がある程度確立しており、国内外でのリーグ戦が多く組まれていることでしょう。各国国内リーグでは差が付く試合もあるようですが、国際リーグであるElite Women’s Hockey League (ラトビア、オーストリア、イタリア、ハンガリーが参戦)やEuropean Women’s Champions Cup(欧州各国の国内チャンピオンチームが参戦)では接戦が多く、何よりも世界選手権やオリンピック予選に通じる国際経験を積む場として機能しています。

しかし、やはり近年ヨーロッパ各国女子ホッケー選手のトップ選手が目指すのはやはりアメリカNCAA D1もしくはD3であり、NCAAを終えた各国のトップ選手が集うのは、やはり北米のCWHLとなっています。ヨーロッパ各国のリーグは、NCAA D1の経験を持つが代表クラスとまではいかなかったアメリカ、カナダ人選手が助っ人としてやってくる場になりつつあります。この辺は男子のNHLとヨーロッパ各国リーグの図式と近くなってきていますね。

3回に渡り、私が調べた限りの世界の女子アイスホッケー事情を紹介しました。アメリカNCAA D1が世界最高の競技環境であることは明白ですが、その後の女子ホッケー選手の競技キャリアを支えていけるようなプロのリーグは世界に存在しません。ヨーロッパのリーグで助っ人して活躍する限られたプロ選手以外は、ほとんどの国の代表選手が仕事を持ち、学校に行きながらオリンピックを目指しています。

現実的に、NCAA D1のような競技環境を望むのは無理がありますが、かつての日本女子サッカーLリーグに世界のトップレベル選手が集ったように、セミプロ的でも生きていけるリーグがあれば世界のタレントが集まり、レベルの高いリーグで国内選手を育成することもできるでしょう。もちろんLリーグが消滅してなでしこリーグに生まれ変わる過程もじゅうぶん参考にする必要もありますが、そのなでしこも、結局競技レベルを上げるために再び国際化が求められています。

このまま北米圧倒的優位の時代が続くのか?それとも女子リーグのセミプロ化を成し遂げ、第三の勢力となる国が現れるのか?これもKHLあたりがスッと手を伸ばして実現しちゃいそうですが、日本も工夫次第でじゅうぶんチャンスはあると思います。オリンピック出場が決まったばかりですが、私は今後4年間の方がはるかに楽しみですね。

それでは。

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世界の女子アイスホッケー (2) カナダ編

まずはコメントへの返信から。

ICEMANさん>

まぁ、、、アメリカの大学ホッケーというか大学スポーツ全般があまりにも巨大なビジネスとして成り立っているので、ちょっとやそっとで追いつける代物ではありません。プロが存在する競技ならまだしも、女子ホッケーのように実質的なプロがない分野では特に顕著です。しかし、実はアメリカと、カナダ以外の国々では、日本も含めて女子ホッケーの環境はあまり変わりません。日本で一時期盛んだった実業団スポーツのような形式にプロ的な運営を取り入れて、セミプロとしてでも食っていける仕組みを作れば世界のトップ4に食い込む余地は十分あると思いますよ。

さて、アメリカが世界最高の女子ホッケーリーグをもつ一方、カナダは女子代表の実力で世界最強です。過去4回のオリンピックでは、長野でアメリカに惜敗したものの、その後3連覇中、世界選手権でも1990年以来14回中10回優勝。しかし追うアメリカは2005年の初優勝以降4回世界の頂点に立ち(その間カナダは2回)、さらに2008年から新設されたU18世界選手権ではアメリカ3回、カナダ2回優勝ですので、今後実力逆転の可能性も十分感じさせます。

ホッケーの母国カナダは617,107人と、圧倒的な競技人口を誇り(2位はアメリカで511,178人)、女子の競技人口も86,675人とダントツです(2位アメリカ66,692人)。全体の競技人口第3位がチェコの95,090人で、女子3位がフィンランドの3,945人ですので、男女ともに北米の競技人口がいかに世界で突出しているか分かります(世界のホッケー人口の3分の2が北米に偏在)。ちなみに日本は競技人口19,975人で世界9位、女子は2,720人で世界5位ですので、数だけ見れば意外とホッケー大国です。(以上 IIHF 2012 Survey of Players より

さて、カナダの女子ユースホッケーがアメリカ以上に盛んなのは説明するまでもないことですが、18歳までのユースホッケーを終えると、トップレベルの選手はアメリカの大学ホッケーにごっそりと流出します。ですから、ほとんどのカナダ女子代表選手はNCAA D1所属か、卒業生で占められています。カナダにもアメリカNCAAに相当するCISという大学スポーツ組織が存在し、スポーツ奨学金の制度もあるのですが、やはり大学そのもののレベルや資金・環境面などでアメリカに対抗できるはずはなく、CISでプレーする代表選手は非常に限られています。せっかくユースホッケーで育てたタレントがライバル国に流出し、大学リーグのレベルを最高に高めてしまうわけですから、カナダとしては歯がゆいことかも知れませんが、あ、これはNHLも似たような図式ですね。

とはいえ、CISのレベルも決して低いわけではなく、ドイツ、ノルウェーの現役代表選手、日本の元代表選手(桐渕絵理:Carlton University)等もプレーしていて、NCAA D1の中堅から下位の力を保っています。

さて、アメリカ編でも書いたように、世界の女子ホッケーの直面する最大の課題はNCAA D1という世界最高峰リーグでプレーした後、代表選手達が高いレベルでプレーをし続ける環境が不足しているということです。社会人になった後もできるだけプロに近い環境で、トップレベルのホッケーを続けられるように、北米では女子のセミプロリーグが過去に何回も創設されていますが、いずれも十分な成功を得られないまま消滅しています。

現在もカナダとアメリカの一部の都市で、大学卒業後のエリート選手の受け皿としてCWHL(Canadian Women’s Hockey League) が運営されています。カナダ、アメリカその他の国々の代表選手が集うこのリーグですが、セミプロと謳うものの運営費以外は基本的に選手の自腹で、用具も選手自身が購入しているようです。NHLチームとの部分的提携などもされているようですが、チームに年間$30,000じゃあねぇ、、、

ではカナダのトップレベル社会人選手達がどうやって生きているかというと、、、ほとんどがフルタイムの仕事をしながら週数回の練習と遠征でホッケーを続けているのが現状です。JOC強化指定選手同様、Meghan Agostaのようにトップクラスの代表選手はカナダのオリンピック委員会から強化費を支給されているようですが「アパート代にもならないくらい」だそうで、NIKEからのスポンサー料、ホッケーキャンプでの指導料などで生計を立てているそうです。このような環境は、アメリカのトップレベル社会人選手であっても同様です。まぁもちろん合宿費に自己負担金があるなんてことはないですが。女子ホッケー界で完全なプロとして生きるためには、現時点ではNCAAかCISのコーチになるしかありません。

というわけで、北米では、圧倒的な競技人口を背景に数多くのタレントが生み出され、NCAAという世界最高リーグのプロ並みの環境でプレーし、世界の女子アイスホッケー界をリードしていますが、その他の女子団体球技と同様に、大学卒業後にトップレベルの選手が競技に専念して生活していけるプロの環境はなく、代表選手ですら仕事をしながらプレーを続けています。つまり、日本の女子の環境とそれほど差があるわけではありません。もちろん就業形態がかなり異なるので、日々の練習や遠征に時間を取りやすいという差はあると思われますが。

次回はヨーロッパ編です。

それでは。

注:ソチオリンピック関連の記事等で当ブログの内容を二次利用される場合は、事前に若林弘紀までご連絡頂くようお願いします。